固定資産は事業供用していないと減価償却できません。
ちょっと何言ってるかわからない。
要するに、仕事で使ってない機械とか備品とかは費用になりませんよって意味です。
そこで登場するのが今回のテーマ、有姿除却っ!
「あの機械しばらく使ってないなあ」というようなものがあったら、ぜひ検討しましょう。
オススメポイントは
- 追加支払いが要らない
- すぐ出来る
というところです。
目次
減価償却できない の意味
まず減価償却ってなんだ
1個10万円を超える機械とか備品とかは「減価償却」という方法で、支払額が経費になります。
わかりにくいのでたとえ話をします。
200万円の普通自動車を新車で買ったとしましょう。
そうですね、トヨタのシエンタとかでどうですか?
僕は好きです、あのデザイン。
この車、皆さんなら何年間乗りますでしょうか?
どうでもいいようで、すごく大事なことなので考えてみてください。
ちなみに僕は社会人になって初めて買った新車(トヨタのWISH)を10年以上乗ってました。
僕の友人は、最初の車検が来るタイミング、つまり3年周期で乗り換えてます。
あと法律では6年です。
ん?法律ってなんだ? とお思いでしょうか。
法律ってのは、ザックリ言うと税金関係の法律のことです。
税金関係の法律では、「普通車ってだいたい6年くらいは乗るんじゃね?」
と決められているんです。
コレを「法定耐用年数」といいます。
僕だったら2回目の車検(5年目)を通して1年ぐらいで手放すって、もったいなさを感じてしまいますけどね…。
ま、そう決まってるもんはしょうがない。
さて、1年目に200万円を支払いました。
全部経費に〜〜〜〜〜〜〜できません(´Д`)
6年ぐらいは乗るんだから、200万円を6年にわけて経費にしてね。
というのが減価償却とよばれるルールです。
使ってないとダメの意味
さてこのシエンタですが、しばらくは仕事用(配達かなにか)に使っていたとしましょう。
ところが何らかの事情で4年目以降使わなくなって、車庫に入れっぱなしになったとしたら…。
そのときは、4年目以降の経費になる予定だったものが、経費にならなくなります。
使用を再開するまでおあずけになってしまうのです。
この例で言えば、33.3万円×3=約100万円ぶんの経費が、持ち越しのままになっているということです。
お金は1年目に既に払っているのにですよ?もったいなくないですか?
下取りにだしたらええやん、とそう簡単に行かない場合もある
今回は車ですから、使わないとなったら売って処分することができます(売却、といいます)
スクラップすることもできますね(除却、といいます)
この場合は4年目以降の経費になるはずだった100万円は、下取りしたり引き取ってもらったときの経費にできます。
しかし、コレがめっちゃデカイ生産機械とかだったらどうでしょう。
- 売ろうと思っても型が古かったりカスタマイズモリモリで引き取り手がない。
- 処分するにも処分料がすごくかかる。
- 図体だけはデカイからスペース食う。
そういった理由で、雨ざらしのまま放置されている機械を拝見したことがございます。
まだ経費にできる部分が残っているのに、です。
売ったり捨てたりしなくても経費にできる 有姿除却
有姿というのは、まだ手元にあると言うような意味です。
除却というのは、捨てたというような意味です。
有姿除却というのは、まだ手元にあるけど捨てたも同然 という意味です。
雨ざらしのまま放置されているけど捨てたわけじゃない。
だけど捨てた「ことにする」という考え方なのですよ。
そしたら持ち越しになってた分ぜんぶを、そのときの経費にできます。
どうですか?決算対策とかに使えると思いませんか?
何しろ追加で払うお金は1円もなしで、経費を作ることができるんですから。
有姿除却が認められるためには
要件
この有姿除却、認められるためには次のどちらかに該当していなければなりません。
- 現在使用しておらず、今後も事業に使う可能性がない。
- 特定の製品生産のための金型で、その製造を中止したため将来も使用する見込みが無いこと。
ポイントは、どちらも将来使用する見込みが無いということです。
裏をかえせば、見込みがないということさえ明らかにできれば良いわけなので、大きな手間がかかりません。
見込みが無い、をどう証明するか
問題は、将来使用する見込みが無いかどうかをどう税務署に説明するかです。
たとえば社内の記録文書として、今後使用しないこととした経緯や理由をのこしておくとかですね。
私が拝見した例では、機械の制御盤をハンマーで叩き壊して操作不能にした社長もいらっしゃいました(´・ω・`)
ただこれも、「制御盤を修理すればまた使えるやん?」という主張の余地を残してしまいます。
1つだけではなく、複数の方法で「将来使用する見込みはない」と主張する材料をつくるとよいでしょう。
有姿除却について、大企業と国が争った事例
「中部電力事件」と呼ばれる訴訟がありました。
火力発電所の有姿除却が正しい処理であるかどうか、中部電力と国が争った事例です。
中部電力は、老朽化した発電設備を稼働停止にしました。
その後、解体費用が莫大であったので撤去せず有姿除却をしたのです。
この時中部電力が経費に計上したのは、なんと合計54億円!!!
一方で国は、「将来使用しない見込みが明らかじゃないよ。有姿除却は認めないよ」と主張したんです。
この有姿除却が認められないと、中部電力は国に約18億円を追加で納税しなければなりません。
結局は
- 再稼働するのにも何十億という点検費用がかかること
- 過去廃止した発電設備のうち、再稼働したものは1基もないこと
などが材料となり、中部電力の主張どおり有姿除却が認められました。
事例は規模がデカすぎますが、中小企業にも税務調査はあります。
有姿除却をした場合には、事前の理論武装が肝要です。
まとめ
有姿除却についておはなししました。
特別な事情が無い限り、実際に処分して無くしてしまったほうが良いです。
使用する見込みが無いいかどうか、明らかにするまでも無いですからね。
ただその場合でも、ホントに無くしたのかどうか(隠しただけじゃないのか)といったツッコミを受ける余地があります。
スクラップ業者や下取り業者に、証明書みたいなものを発行してもらうと吉です。
どうしても処分できない場合には、有姿除却を検討しましょう。
この記事を書いたひと
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税理士・1級FP。個人事業主や中小法人の税金のお悩みを解決したり、会計処理・税務申告の代行をやったりしています。 freeeが超得意で導入支援の実績多数。一般の方向けのやさしい税務解説記事を書けるのが強みです。詳しいプロフィールはこちら。
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