
『改善提案の報奨金には税金がかからないのかな?』
『源泉所得税、天引きしなくていいの?』
そうお考えの方にむけた記事です。
当記事では、改善提案の報奨金と税金の関係について解説しています。
読んでいただくと、次のようなことがわかりますよ。
- どういう場合に税金がかかるか
給与所得、一時所得、雑所得のパターンがあります - 税金がかかる場合の取り扱い(報奨金を払った側)
- 税金がかかる場合の取り扱い(報奨金を受け取った側)
所得税の源泉徴収や消費税の計算に影響があります - 税金がかからないようにするにはどうすべきか
通常の職務以外の提案を募集する、強制しない、一括払いしないなどのポイントがあります
目次
改善提案と報奨金の関係
皆様の職場には、社内提案制度はありますか?
発明と呼ぶほどでもない事務や作業の合理化、経費の節約などの工夫を従業員から募って、その内容に応じて報奨金が支払われる制度です。私がかつて所属していた会社にもありました。
さてその報奨金、もらった側に税金がかかる場合がありますのでご注意くださいね。
- 給与所得
- 一時所得
- 雑所得
給与所得として税金がかかるパターン
どういう場合に該当するか
提案すること自体がその人の本来の仕事である場合、報奨金は給料に該当します。
仕事の対価として支払われたものですからね。
▼給与所得についての解説はコチラ▼
ところで、提案が仕事ってのはいったいどういうことでしょうか?わたくし自身の例でご説明します。
具体的な事例
大学を卒業して初めて入社した運送会社で、物流改善課という部署に配属されました。その名の通り、物流の品質・コスト改善を職務とする課です。
さて、そんな私が物流品質の改善提案を行った場合、それは本来の仕事といえるでしょうか?
答えはイエスです。簡単ですよね?それでは、こんな場合はどうですか?
社内改善提案の募集がありました。わたしは事務所内の照明にかかる電気代を節約するために、蛍光灯の間引きを提案したのです。この提案は私の本来の仕事といえるでしょうか?
答えはノー。私の仕事は物流品質・コストの改善であって、経費の節約提案ではありません。
このように、提案そのものがその人の職責でなければ、ひとまず給料には該当しません。
ただし一つだけ注意点が。
社内提案に全社員の参加が義務付けられている場合には、提案を行うことが職責になってしまいます。つまり、本来の仕事という扱いで報奨金は給与に該当するわけです。
該当するとどうなるか
貰った側
報奨金は給与扱いなので、通常のお給料と同じ扱いになります。つまり、税金が天引きされてしまうわけです。
払った側
払った側にとっても給与扱いなので、所得税を天引きしなければなりません。給与なので、消費税はかかりません。
一時所得として原則的には税金がかかるパターン
どういう場合に該当するか
その提案が本来の仕事ではない。そして一括払いである。
そんなとき、報奨金は一時所得に該当します。
一時所得とは、営利目的以外の、仕事や資産売却の対価でない一時的な収入をいうためです。
原則的には税金の対象となります。
該当するとどうなるか
貰った側
貰った金額が年間合計で50万円を超えなければ、税金はかかりません。確定申告も不要です。
社内提案の報奨っていったらお小遣い程度ですよね、普通。
50万円を超えるようなことはないと思いますので、金額のことはよっぽど気にしなくてよろしいかと考えられます。
払った側
福利厚生費で処理します。給与と違って所得税は天引きしません。
ただし消費税はかかります。
雑所得として税金がかかるパターン
どういう場合に該当するか
その提案が本来の仕事ではない。そして継続払い(毎月払いとか、毎年払いとか)である。
そんなとき、報奨金は雑所得という扱いになります。
1回の提案について何度も報奨金が貰える場合に該当します。
特許や実用新案とかの登録対象になるレベルですと、その改善提案の「利用料」といったかんじで継続的に支払いをおこなう企業もあるようです。
該当するとどうなるか
貰った側
原則、税金がかかりますし確定申告が必要です(ノ∀`)アチャー
ちなみに、「雑所得は20万円未満なら申告しなくても良い」という特例もあります。が、この特例はいろいろ罠がありますのでご注意ください。
払った側
福利厚生費で処理します。給与と違って所得税は天引きしません。ただし消費税はかかります。
もらった側に税金がかからないようにするためには
改善提案の表彰金に税金がかかるとか、申告が必要とかは避けたいですよね。
提案をする側のモチベーションにも関わりますので。
そこで、次のような点を意識して改善提案制度を設計してはいかがでしょう?
- 通常の職務以外の提案を募集
- 参加を義務付けない
- 一括払いにする
これでしたら、年間の報奨金額が50万円を超えない限り、もらった側に税金がかかることはありません。
なお報奨金を支給する場合には、必ず支給基準を規程として文書化しておきましょう。
基準が明確になっていないと、税務調査のときに困るからです。
「支払ったのは改善提案の報奨金である。」と主張しても、給与とみなされてしまうこともありえますからね。そうなると結局、税金がかかっちゃいます。
まとめ
改善提案の報奨金に税金がかかる3つのパターンを解説いたしました。
- どういう場合に税金がかかるか
給与所得、一時所得、雑所得のパターンがあります - 税金がかかる場合の取り扱い(報奨金を払った側)
- 税金がかかる場合の取り扱い(報奨金を受け取った側)
所得税の源泉徴収や消費税の計算に影響があります - 税金がかからないようにするにはどうすべきか
通常の職務以外の提案を募集する、強制しない、一括払いしないなどのポイントがあります
生産性向上に地味に貢献してくれるのが改善提案です。税金関係にも注意しつつ、ご活用くださいませ。
この記事を書いたひと

- 税理士
- 愛知県西尾市にあるBANZAI税理士事務所の代表です。1982年6月21日生まれ。クラウドを使った業務効率化の提案を得意としています。郷ひろみと間宮祥太朗とばくだんいわを合成したような顔をしている、と言われております。 税法免除大学院1年目に官報合格したという変わり種。freee"マジ価値"meetup!名古屋地区のリーダーです。既婚。詳しいプロフィールはこちら。
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