会社負担の免許・資格取得費用と税金の関係

税理士の伴 洋太郎(ばん ようたろう)@ban_tax240です。

世の中には免許や資格がないとできないお仕事がたくさんありますね。大型トラック乗務員、建設重機オペレーター、危険物取扱者 などなど。

経営者の理想としては、業務に必要な資格や免許をあらかじめ持っている人を採用できれば良いのですがけどもね。人手不足の昨今、贅沢言ってられない事情もあります。

そこで既にいる従業員や新たに採用した従業員に免許・資格の取得を命じたり免許が取れることをメリットとして求人をかけたりすることがあります。免許取得費用は会社持ちで。

今回はそんな「業務命令で従業員に資格を取得させた場合の費用」についての話です。

【原則】会社が負担した免許・資格取得の費用は給与扱い

従業員個人の名前で登録する免許や資格は、その従業員個人に帰属するものです。その取得費用を会社が負担した場合

会社が従業員に資格を現物支給したようなもんでしょ? そしたら給料として税金を天引きしなきゃいけないの?

という疑問を持つ方が少なくありません。社長!なかなか鋭い!!

所得税法では、通常の給与や諸手当のほか、現物給与も給与扱いして税金をかけることとされています。

 給与は、金銭で支給されるのが普通ですが、食事の現物支給や商品の値引販売などのように次に掲げるような物又は権利その他の経済的利益をもって支給されることがあります。

(1) 物品その他の資産を無償又は低い価額により譲渡したことによる経済的利益
(2) 土地、家屋、金銭その他の資産を無償又は低い対価により貸し付けたことによる経済的利益
(3) 福利厚生施設の利用など(2)以外の用役を無償又は低い対価により提供したことによる経済的利益
(4) 個人的債務を免除又は負担したことによる経済的利益

    本来なら免許・資格取得費用は従業員個人が負担すべきものです。その免許・資格は従業員個人の持ち物になるわけですからね。

    それを会社が負担するということは、個人的な債務を会社が負担することで従業員に利益をもたらすことに違いありません。

    ということで、会社が負担した費用は従業員に対する給与に該当します。会社は所得税の源泉徴収をしなきゃなりません

    給与なので経費で落ちることは間違いないですけどね。ただ、従業員としてはどうでしょう?面白くないかもしれませんね。会社命令で免許・資格を取得したのに、それに税金がかけられるわけですから。

    会社としても経理処理が面倒です。なんとか給与扱いされないようにできないか、とお考えの方、ご安心を。一定の条件を満たせば、給与扱いしなくて済みます

    【例外】条件さえ満たせば給与扱いしなくて済む

    国税庁の公式見解(「通達」と言われるものです。)では、次の通り述べられています。

    使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。

     

    長いんで要約すると、次の条件を満たせば給与扱いしなくていいということです。

    会社負担の資格取得費用を給与扱いしなくて済む条件
    • その資格・免許が会社の業務を遂行するうえで必要であること
    • その資格・免許が職員の職務に直接必要であること
    • 金額が適正であること

    仕事に必要ない資格・免許だと給与、金額が適正じゃない(実費以上に支払うとか)と給与だと。

    まぁ、おおむね納得できる内容だとは思うのですが、ひとつだけ注意点があります。「直接必要」かどうかの判断基準が明確でないのです。

    【注意】間接的じゃなくて直接に必要

    従業員の職務に必要なだけではダメなんです。「直接」必要じゃなきゃいけないんですって。

    いわゆる「直接性要件」と言われるものなんですが、これがまた意味合いがはっきりしていないから困りものです。

    例えば旅客運送業(バス)における2種免許は、乗務員さんにとって「直接」必要と言えますが

    我が社のサービスをよりよく理解するために、事務職員にも2種免許を取らせたい

    という場合はどうでしょう?その線引は曖昧ではありませんか?

    私は旅客運送業の事務職にとって、2種免許が「直接」必要ではないと考えます。だって、ハンドル握らないんですもの。間接的に必要であることまで否定はしませんけどもね。

    社長が真に、信念をもっておっしゃっているのならば、「直接必要」なものとして給与扱いしないことを止めはしません。税務署からの指摘に耐えられるかどうかは別問題ですが。

    悩ましい場合には、税理士や税務署へ確認いただいたうえで、のちの課税リスクも踏まえて検討すべきでしょう。

    一番大事なのは、その費用負担を決断した理由です。合理的な説明ができなければ、簡単に否認されてしまいますのでご注意を。

    まとめ

    会社が負担した免許・資格取得費用の取扱についてお話ししました。

    仮に税務調査などで給与として認定がされると、とっても面倒なんです。税務署へ所得税を追加で納付して、場合によっては延滞税も納付して、そのうえで従業員からも追加徴収しなきゃいけない。

    上述したとおり、後から徴収されるってのは従業員にとっても面白くありません。なにせ会社命令で資格をとりに行ったわけですから。なんで俺が負担せねばならんのだ、という話です。

    可能な限り、費用負担をする前に税務上の取扱を確認しておきましょう。

    この記事を書いたひと

    伴 洋太郎(ばん ようたろう)
    伴 洋太郎(ばん ようたろう)税理士
    愛知県西尾市にある伴洋太郎税理士事務所の代表です。1982年6月21日生まれ。クラウドを使った業務効率化の提案を得意としています。郷ひろみと間宮祥太朗とばくだんいわを合成したような顔をしている、と言われております。 税法免除大学院1年目に官報合格したという変わり種。freee"マジ価値"meetup!名古屋地区のリーダーです。既婚。詳しいプロフィールはこちら。
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