自宅兼事務所の家事按分って、どうすりゃいいの?
そうお考えの方へ向けた記事です。
当記事では、個人事業主が自宅件事務所の家賃を経費にするために必要な、家事按分について解説しています。
読んでいただくと、次のようなことがわかりますよ!
- 按分の方法
業務に使用している面積や時間の占める割合で按分します - 勘定科目
按分により経費になる部分は「地代家賃」、それ以外は「事業主貸」で仕訳します。 - 仕訳方法
まとめて処理する方法と、家賃支払いの都度処理する方法があります。
目次
【前提】家事按分の際、意識すべきこと
個人事業主が仕事・プライベート兼用で使っている自宅の家賃は、その金額に「按分割合」をかけた部分だけが経費として申告できます。
プライベート使用した分については、業務上の経費ではないためです。支払った家賃を「プライベート使用分」と「業務使用分」に分ける(按分)しなければならないのです。
その際、意識すべきことがあります。それが「按分方法は合理的に計算されているか?」ということです。
按分割合とは
按分割合は、その自宅を業務用に使っている部分の割合で求めます。
その求め方は、具体的に法律などで決まっているわけではありません。
とはいえ、お手盛りでザックリきめてしまうのはいけません。
個人事業主が家事関連費※の一部を経費にするためには次の2つの要件を満たしていることが必要だからです。
ひとつでも欠けていたら、経費としては認められません。
- 業務の遂行上必要であること
- その必要な部分の金額が明確に区分されていること
家事按分の方法は、これら2つの要件をクリアするものであることが前提となります。
明確に区分できなきゃ経費にできない
「業務の遂行上必要」という要件については、そりゃそうだって感じですよね?
業務に関係ないプライベートな支払いは、とうぜん経費にはなりません。
大事なのは2番め、「明確に区分されていること」です。ここが抜けてはいけません。
業務使用分の金額が明確に区分できないと、業務に必要であったとしても経費として認められないからです。
ネット上の解説記事では「だいたい50%くらいなら税務署も許してくれるよ~。」みたいに何の根拠もなく書かれているものも見受けられますね。
しかし実際には、そんなユルいもんじゃありません。
【按分割合】面積または時間で計算する
按分割合の計算は、客観的に見て合理的な方法で計算しなければなりません。
ここでは、その方法として合理的だと考えられるものを紹介します。
- 使用面積で計算する方法
業務専用に使っている部屋がある場合はコチラ - 使用時間で計算する方法
業務専用部屋がない場合はコチラ
業務専用部屋は使用面積で求める
業務専用に使っている部屋がある場合には「自宅の総床面積」のうち「業務専用部屋の床面積」の占める割合で計算します。
わたしは基本的に、この方法をおすすめしています。
つまり
ということです。
後述するとおり、業務で必要な部分を明確に区分できるためです。
按分割合の計算例
たとえば次のような物件を借りて、一部を仕事部屋として使っていたとします。
- 家賃
月80,000円 - 自宅の総床面積
50㎡(賃貸契約書で確認) - 仕事専用部屋の床面積
6畳=約11㎡(間取り図で確認)
この場合、按分割合は22%(=11÷50)、経費にできる金額は家賃月額のうち17,600円(80,000×22%)と計算できます。
「業務専用」部分の「面積」で求める利点
わたしは基本的に、自宅家賃を経費にするなら仕事専用部屋を設けるようにオススメしています。
理由は、業務部分と家事部分の区別がつけやすいからです。
- 専用なので、家事に使っていないことを明らかにしやすい
- 壁や床、廊下などによって、家事部分との物理的な境界が明らか
- 図面をもとに、客観的に計測可能な数値(面積)を根拠にできる
家事・業務兼用部屋は使用時間で求める
プライベートと仕事に兼用している部屋の場合、その部屋を業務用に使用している時間の割合で按分割合を計算します。
ワンルームなどの場合、業務スペースと家事スペースを空間として区分できません。
「面積」による計算ができないため「時間」をつかうわけです。
したがって、実際に計算する際には「業務で使用した時間」を計測する必要があります。
按分割合の計算例
たとえば次のようなワンルームの物件を借りて、その一角で業務を行っていたとします。
- 家賃
月50,000円 - その家を使用した時間
1日あたり24時間×1ヶ月30日=720時間とする - 仕事で使用した時間
1日あたり8時間×1ヶ月の稼働日数20日=160時間とする
この場合、按分割合は22.2…%(=160÷720)、経費にできる金額は家賃月額のうち約11,000円(=50,000×22.2…%)と計算します。
使用時間で按分する欠点
業務使用している時間の割合で按分する方法は、手間がかかるのが欠点です。
計算根拠をしっかり残しておく必要があるためです。
どんな業務に何時間使ったかなど、事細かに記録を残しておかねばなりません。
- 日付、時刻
- 所要時間
- 業務の内容
可能ならば、毎日記録をとります。
それが手間であれば、ある標準的な業務量の1ヶ月間の記録をとっておいて、それを標準的な使用時間として計算根拠にするとよいでしょう。
もちろん、「標準的な業務量」が変化したときには、その都度記録を取り直しましょう。
めんどいですよねぇ・・・。
そもそも家賃は「業務上必要か」「明確に区分できるか」という点において、疑義が残りやすいんですよ。
自宅という、プライベート性の高い空間にかかる費用ですからね。
仕事専用部屋が無いとなると、なおさらです。しっかり記録をとって、根拠を残しておかねばなりません。
- プライベートな用事に使っていないことを明らかにしやすい
- 壁や床、廊下などによって、プライベート部分との物理的な境界が明らか
- 客観的に計測可能な数値(面積)を根拠にできる
- プライベートな用事に使っていないことを明らかにしづらい
- 壁や床、廊下など、プライベート部分との物理的な境界がない
- 客観的に計測可能な根拠を示しにくい
【勘定科目】地代家賃をつかう
家事按分により計算した家賃の勘定科目は「地代家賃」で登録します。
「地代家賃」は、不動産を賃借して業務に使用している場合に、不動産の所有者等へ支払った賃料を登録しておく勘定科目です。
なお、家事按分の結果経費にならなかった部分の勘定科目は「事業主貸」で登録します。
【仕訳】まとめて仕訳するか、その都度か
家事按分した家賃の仕訳方法は、主に2つ考えられます。
- 家賃支払い時に全額を事業分(地代家賃)として登録して、決算時に家事分(事業主貸)を差し引く方法
- 家賃支払いの都度、事業分(地代家賃)と家事(事業主貸)を分けて登録する方法
以下、それぞれの方法について解説します。
【仕訳1】全額を地代家賃にしてから、家事分をまとめて引く方法
毎月の家賃支払い時には全額を『地代家賃』にしておいて、決算時に家事部分を『事業主貸』に振り替える方法です。
按分処理が1回で済むメリットがある一方、毎月の経費が本来より多めに計上されてしまう(決算で帳尻をあわせる)デメリットがあります。
という方はこちらの方法でやりましょう。
家賃を支払ったとき
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
地代家賃 | 80,000 | 普通預金 | 80,000 |
決算時
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
事業主貸 | 748,000 | 地代家賃 | 748,800 |
【仕訳2】支払いの都度、家事分と業務分を分ける方法
毎月の家賃支払い時に、事業部分と家事部分を分けて仕訳する方法です。
毎月の経費の金額が正しく計上されるメリットがある一方、按分処理の回数が増えてしまうデメリットがあります。
という方は、こちらの方法でやりましょう。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
地代家賃 | 17,600 | 普通預金 | 80,000 |
事業主貸 | 62,400 |
まとめ
個人事業主が自宅件事務所の家賃を経費にするために必要な、家事按分について解説しました。
- 按分の方法
業務に使用している面積や時間の占める割合で按分します - 勘定科目
按分により経費になる部分は「地代家賃」、それ以外は「事業主貸」で仕訳します。 - 仕訳方法
まとめて処理する方法と、家賃支払いの都度処理する方法があります。
この記事を書いたひと
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税理士・1級FP。個人事業主や中小法人の税金のお悩みを解決したり、会計処理・税務申告の代行をやったりしています。 freeeが超得意で導入支援の実績多数。一般の方向けのやさしい税務解説記事を書けるのが強みです。詳しいプロフィールはこちら。
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