役員個人の会費を会社が負担している場合は、会社の経費になるの?
個人事業主としてロータリークラブに入会してるんだけど、会費は経費にできるんだよね?
そうお考えの方へ向けた記事です。
当記事では、ロータリークラブ、ライオンズクラブの会費が経費になるかどうかを
との思いを込めて解説しています。
読んでいただくと、次のようなことがわかりますよ。
- 法人の場合
交際費として経費になります - 個人事業主の場合
経費にはなりません(生活費扱いです) - 法人と個人で取り扱いが違うのはなぜ?
法人には「私的な消費活動の主体」という側面が無いためです
目次
法人の場合、経費にできる
入会金、経常会費は交際費
法人の支払ったロータリークラブやライオンズクラブの入会金・経常会費は、交際費として法人の経費(損金)になります。
通常、法人が役員や従業員をこれらのクラブに参加させるのは事業者同士の交流を通じて顧客を獲得することを期待しているからです。
そのため、接待交際のために支出した費用として取り扱います。
国税庁も、同様の公式見解(通達)を出しています。
法人がロータリークラブ又はライオンズクラブに対する入会金又は会費等を負担した場合には、次による。【中略】
法人税法基本通達9-7-15の2
(1) 入会金又は経常会費として負担した金額については、その支出をした日の属する事業年度の交際費とする。【後略】
この公式見解は、ロータリーやライオンズの会費や加入目的に次のような特徴があることを考慮して発されているものです。
- クラブの活動目的は社会奉仕等であるが、その入会金や会費の大半は会員の集まる定例会の食事代等に使われているのが実情であるため。
- 会員は(クラブが掲げる活動目的とは異なり)定例会を通じた事業者間の懇親を深めることを目的として加入していることが否定できないため。
臨時会費は寄附金や役員給与等にあたる場合も
なお、入会金や経常会費以外の臨時に徴収される会費については、その使いみちによって「寄付金」や「役員報酬」などに該当するケースもあります。
(2) (1)以外に負担した金額については、その支出の目的に応じて寄附金又は交際費とする。ただし、会員たる特定の役員又は使用人の負担すべきものであると認められる場合には、当該負担した金額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
法人税法基本通達9-7-15の2
特定の寄付活動のために徴収される特別会費や、役員・従業員の私的な交流・自己研鑽のためにかかる会費などがこれにあたります。
個人の場合、経費ではなく生活費扱い
個人事業主が支払ったローターリークラブやライオンズクラブの会費は、残念ながら経費にはなりません。
より正確にいうと、私は必要経費に含めるべきだと思うのですが、現実問題として認められる可能性が低いのです。
裁判や国税不服審判において、ロータリークラブの会費が経費として認められるか争われた事例が(私が知る限り)4件あるのですが、その全件で
と、結論づけられているためです。
- 弁護士(長野地裁 平成30年9月7日判決)
- 司法書士(国税不服審判所 平成26年3月6日裁決)
- 医師(国税不服審判所平成17年4月26日裁決)
- 公認会計士税理士(国税不服審判所 昭和58年1月27日裁決)
またこれらはすべてロータリークラブの事例ですが、同等の活動をしているライオンズクラブでも同じ結論になろうかと思います。
経費に認められないのは「事業遂行に不必要だから」
過去の事例で会費が経費に認められなかったのは
と、裁判官や審判官が判断したためです。
たとえば弁護士の事例(長野地判 平成30年9月7日)では、次のように弁護士側の主張が退けられました。
- クラブの会員としての資格を認められることは、職業人として信頼に値する人物であることを意味する。
- 信頼に値する弁護士として、他の会員から顧客の紹介を受け、また他の会員が直接顧客となっている。
- 顧客の獲得・維持に寄与していることから、クラブの会員であることは、弁護士業務遂行の上で、必要かつ極めて有効な要因となっている。
- クラブの会員は、奉仕の理念の奨励という目的に従って、各種奉仕活動を行っていて、会費はその活動のために支出したものである。
- 奉仕活動と、法律事務を行う弁護士としての経済活動とには、直接の関連性はなく、会費は業務遂行上必要であるとはいえない。
- クラブでの活動を通じて顧客を獲得していたとしても、それは副次的・間接な効果に過ぎない。
【私見】キビしすぎじゃない?
ハッキリ言って僕は、判決や裁決に納得がいきません。
たしかに、ロータリーやライオンズは「社会奉仕」を存立目的としていて、それ自体は会員の商売と直接の関係はないでしょう。
しかし事業者は、「事業者としての信用確保」と、それを通じた「顧客の獲得・維持」を目的として入会しているのが実情です。その目的を達成するために、資金と時間をクラブ活動に投下しているのではありませんか。
そこには、会費という「資本の投下」と、顧客獲得による「投下資本の回収」という、商売の大原則が成り立っているはずです。それがナゼ、事業の遂行に必要ないと言い切れるのでしょうか?
これは想像の域を出ませんが、クラブの規約に「会員同士で顧客を紹介しあったり、また自らが他の会員の顧客になってはいけない」と定められたとしたら、入会する事業者はガクンと減るはずです。
そういった入会の実質的な動機を度外視して、クラブの存立目的ばかりが取り沙汰されるのは、どうも腑に落ちないのです。
まあ、そうは言っても、いざ裁判にまで進展してしまうと(いまのところ)勝ち目はなさそうなので、経費になるかどうかを問われれば「ならない」と答えざるを得ないのが現状です。
法人と個人で取り扱いが異なる理由
法人と個人事業主とで会費の扱いが異なるのは、裁判所によると「法人には私的な消費活動の主体としての側面が無いから」です。
裁判所による説明
弁護士の事例(長野地判 平成30年9月7日)において、裁判所は法人と個人につぎのような違いがあるこを指摘しています。
- 事業遂行または所得獲得を目的として設立される。
- その活動はすべて事業遂行または所得獲得のために行われるため、その活動に要した支出も経費にすることが認められる。
- 事業遂行・所得獲得の主体であるとともに、私的な消費活動の主体でもある。
- その支出には、所得獲得のための必要経費に該当するものもあれば、私的な消費(生活費)に該当するものもある。
私的な消費活動を行わない法人と、私的な消費活動を行う個人が、経費について異なる取り扱いを受けるとしても、不合理ではないというのです。
同じロータリーやライオンズの活動であっても、法人がやる場合は「事業活動」で、個人がやる場合には「私的な消費活動」だということですね。
【私見】キビしすぎじゃない?
個人は「私的な消費活動」の主体としての側面もあるから、法人とは異なる扱いがされても合理的でないとは言えない。
それはそのとおりだな、と思います。
でも、ロータリーやライオンズでの活動は、「私的な消費活動」なんでしょうか?みなさん自らの社名や業種を掲げて、顧客の獲得を期待して活動しておられますよ。
なんて方、いらっしゃらないと思うのですが…。
なんだか、市民と裁判官との感覚差を感じずにはいられません。
まとめ
ロータリークラブ、ライオンズクラブの会費が経費になるか、という点について
という思いを込めて解説しました。
この記事を書いたひと
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税理士・1級FP。個人事業主や中小法人の税金のお悩みを解決したり、会計処理・税務申告の代行をやったりしています。 freeeが超得意で導入支援の実績多数。一般の方向けのやさしい税務解説記事を書けるのが強みです。詳しいプロフィールはこちら。
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