税理士の伴 洋太郎(ばん ようたろう)@ban_tax240です。
税理士になるには、次のいずれかに該当する必要があります。
- 試験合格者
- 試験免除者(学位または国税従事による)
- 公認会計士有資格者
- 弁護士有資格
税理士資格の取得にチャレンジなさる方の多くは1,の試験合格か2.の学位による免除を選択することとなります。
各取得手段の詳細についてはネット上に多くの情報がありますが、反面少ないと感じるのが実際に各手段で資格を取得した後のこと。
そこで当記事では、資格取得手段の違いによって何かしらの差が生じるかということを、データと個人的なエピソードで語ります。
目次
データ編
まずは試験合格と免除の差を、データから探れないか検討しました。
ハッキリわかったのは、試験合格者の数的存在感が低下していることと、試験免除者および(本記事のテーマとは関係ないけど)公認会計士の存在感が高まっていることです。
試験合格が正攻法、と思われがちなフシはあるのですが、登録者数の推移を見ると、そうとは言い切れない現状が見て取れます。
年度末資格別登録者数では、免除者が増加傾向 合格者は横ばい
2017年度以前の各年度末における、登録資格別の税理士登録者数です。【単位:人】
「試験免除者」の中には学位免除と国税従事による免除の両方が含まれています。そこを分けてくれてると良かったんですけどねぇ。全然別物ですし。
試験合格者数は横ばいで、免除と公認会計士が増加傾向となっています。このまま行くと近い将来、三つ巴みたいなことになったりするんだろうか。
今まさに三国志(横山光輝版)を読んでるんで、胸熱です。
資格別新規登録者数では、試験合格者が減少傾向 免除者は浮き沈み
2017年度以前の各年度における、登録資格別の新規税理士登録者数です。【単位:人】
試験合格者の新規登録、明らかに減ってますね。税理士試験の受験者数が激減していますし、当然の結果でしょう。一方の免除者は増えたり減ったり。
そしてここでも出た、公認会計士。じわじわ存在感を高めております。胸熱。
エピソード編
試験合格後からこれまでの間に、免除を受けた方との差を感じたことがあったかなぁ?・・・という場面を思い起こしてみました。
正直、あんまし差は無いんじゃないかと思います。
合格祝賀パーティーでは、免除利用者の出席が多い
正確には資格取得前なんですが、TAC名古屋校の平成28年度合格祝賀パーティーでのこと。
5科目すべて通信で受講していた私には、受験仲間がいませんでした。
合格したものの喜びを分かち合えるような同志はおらず、ハッキリ言って孤独でした。その荒涼たるHeartを癒そうと、Lonely Boyはパーティーに出席したのです。
そこには私のほかに10名のかたが出席していました。全員とお話しできたわけではないんですが、少なくとも半数の方は学位免除制度を利用されたようです。
TACや大原の合格体験記を拝見しても、みなさん5科目合格じゃないですか。なので合格祝賀会に参加されるのは試験合格の方ばかりであると思っていました。
肩透かしというか、意外であったこと、そして免除制度の活用がここまで浸透しているのかという驚きがあったことを覚えています。
同業者間では、合格か免除か聞かれる機会もあるけど影響はナシ
各税理士会には、税務署の管轄ごとに支部があります。私はこれまで2つの支部に所属しました。そこでのこと。
当然ですけど、会員は皆いずれかの方法で税理士に登録されているわけです。でも、誰がどういう経緯で登録されたかなんて見分けがつくもんじゃありません。
国税従事者の方はわかりやすいですけどね。定例会場では同士で集まっておられることが多いですし、勤務経験を匂わせる話題をよく出されるし、相応のご年齢なので。
とはいえ支部に入った当初は、聞かれることもままあるんですよ。
みたいに。
聞かれれば試験合格だと答えるんですが、その後の反応はつぎのような感じ。
ただし、そうして私が試験合格による登録であるとご存知になられても、その後の扱いに変化があったようには感じません。それは私が免除であったとしても同じなんだと思います。
心の内はわかりませんけどね。書籍でこんなこと書いておられた税理士もいらっしゃいましたし。
- 通達を中心として税法を解釈しようとする
(試験問題が通達を所与としているからとのこと) - 極端に緻密な仕事をする反面、臆病でもある
(反面、学位免除者は大胆だと。どういうこと?) - 苦労して資格を取得しただけに金銭への執着が強い
(苦労を実らせるために顧問料を高めに設定する傾向があるんですって) - 日和見主義者が多い
(税理士会の中での立ち位置ってことですかね?) - OB税理士と対立構造を取りがち
(対立して、なんか得することあるんだろうか?)
ハァ?です。
なお私は、試験合格か免除かを積極的に伺うことはありませんし、それを知ったからといって、どうということはありません。
それよりも、どんなツールを使ってるのかな、どんな分野が得意なのかな、実務の勉強はどうやっているのかな、といったことのほうが興味があります。
お客様は、そもそも興味がない
税理士に依頼されておられるお客様はどのようにおっしゃっているか、なのですが。
試験合格以外に登録ルートが複数あること自体、ご存知無い方が大半です。合格か免除かなど、気にしていないどころか興味すらないんです。
ただ、知ってる人は知っていて、コメントされることも僅かながらあります。
そうは言っても、合格か免除かで付き合う税理士を選ぶような方には、私はお会いしたことがございません。
結局のところ、「どれだけの料金でどのような効果をもたらしてくれるか」が関心事なのであって、個別の税理士の資格取得手段には関心を寄せておられないのではないでしょうか?
ネット上では、免除を蔑む声がかなり減った
私が受験をはじめた2010年頃の、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)でのこと。
上述のとおり受験仲間のいなかった私は、寂しさから同志(受験生)の声を聞こうと「会計全般試験板」をよく覗いていました。
そこには免除制度をテーマにしたスレッドもあったんですが、これがまぁ罵詈雑言の限りが尽くされていて、酷いもんでした。
だの、デタラメな書き込みで荒らされまくってたもんです。ま、2ちゃんってそういうところです。匿名掲示板の書き込みに反応する必要なんて無いのは百も承知。
とはいえ5科目合格を目指していた当時、それらが私の気持ちを少しも補強しなかったかといえば、そうではないわけで。
免除が合格に引けを取るように誤解してしまう風潮があることは否めませんでした。
半ば幻想めいた誹謗中傷であっても、試験免除よる資格取得とその後の税理士としての活動について明るくないものからすると、まことしやかに聞こえてしまうものなんでしょう。
当今ネット上では、学位免除により税理士になられた方がSNSやブログで積極的に情報発信をされるようになり、その知見の広さや活躍ぶりをうかがい知ることも容易になりました。
おかげで情報格差も小さくなったのでしょう、5ちゃんでも免除制度について肯定的な書き込みが増えたような気がします。
まとめ:手段ではなく、資格取得後の振る舞いで差が出る
税理士試験の5科目合格と学位免除について、資格取得後に何らかの差が生じるかどうか検討しました。
資格の取得手段によって税理士としての魅力とか能力とか処遇とかに差がつくかといえば、そんなことは無いでしょう。差がつくとしたら、それは資格取得後の振る舞いによるものだと思うんですよ。
自己に足りないと思うものは補って、強みだと思うものは伸ばして、そうして自分なりの税理士像を作り上げていけば良いのではないでしょうか。それができない人はいつか淘汰されますよ。合格か免除かにかかわらず。
自らも努力を続けていかなければと、気持ちを新たにいたしました。
この記事を書いたひと
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税理士・1級FP。個人事業主や中小法人の税金のお悩みを解決したり、会計処理・税務申告の代行をやったりしています。 freeeが超得意で導入支援の実績多数。一般の方向けのやさしい税務解説記事を書けるのが強みです。詳しいプロフィールはこちら。
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