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事例紹介

CASE

【西尾市】農地を引き継いだご家族の相続で農地等の納税猶予を適用し、期限内に申告した事例

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基本情報

項目内容
エリア西尾市
ご相談者の属性被相続人の配偶者とお子様

補足:相続人は配偶者とお子様4名の計5名。ご自宅とその敷地、数千㎡の農地と預貯金が主な財産です。

事例の概要

西尾市で、ご自宅と数千㎡の農地を中心に、遺産総額8,000万円台の相続税申告をお手伝いした事例です。農地等の納税猶予を適用し、相続税の総額200万円台のうち約100万円の納税が猶予されました(減額ではなく猶予で、営農の継続が前提)。あわせて、所有者の登記がない家屋を名寄帳と現地の食い違いから見つけて財産に加え、配偶者居住権と小規模宅地等の特例を組み合わせています。小規模宅地等の特例で約830万円を減額し、実際の納税額は80万円台になりました。

ご相談のきっかけ

お父様が残された財産の中心は、ご自宅と農地です。相続の手続を担当していた司法書士が財産の概要を確認したところ、相続税の申告が必要になる可能性がうかがわれたため、詳しく見てほしいと当事務所にご紹介がありました。

農地は、田を地域の農地を預かる公的な機関に貸し、畑はご自身で耕しておられ、農地を継ぐお子様もいらっしゃったため、農地等の納税猶予を使えるかどうかが大きな論点になりました。

ご相談のポイントと対応

農地の納税猶予は、使えるかどうか、使うかどうかの判断とあわせて、申告期限までに手続を済ませられるかで結果が決まります。遺産の分け方を決め、農業委員会の証明を受け、担保を提供するところまでが期限内に終わっていなければ使えず、期限を過ぎてから使う道もありません。なかでも時間がかかるのが、農業委員会の証明です。西尾市では月に1回の委員会で審査され、会議ごとに申請の締切が決まっています。締切を1日過ぎれば翌月の会議に回り、会議のあとも交付までに日数があるため、本件でも申請から受け取りまでおよそ40日かかりました。

納税猶予を適用できるかを、農地の使われ方から確かめた

  • 自分で耕している畑と、人に貸している田があった
    納税猶予を使えるのは、亡くなった方が農業に使っていた農地を、農業を継ぐ相続人が引き継ぐ場合です。 市街化区域の外にある農地を農地中間管理機構(地域の農地を借り受けて担い手に貸し出す公的な機関)に貸している場合は、特定貸付けとして扱われます。この貸付けを行っていた方が亡くなり、その農地を相続人が引き継いだ場合は、亡くなる日まで農業に使っていたものとみなして納税猶予を適用できる仕組みです。 農地を引き継がれたお子様に営農を続ける意向がありましたので、農地等についての相続税の納税猶予を適用しました。 この扱いを受けるには、特定貸付けを行っている旨の届出書を相続税の申告期限までに提出する必要があります。提出がなければ適用そのものが受けられません。申告書と一緒に提出しています。

使うと決めた時点で、先の長い約束が始まる

  • 免除の時期は、農地のある場所で決まる
    猶予された税額は、農業を引き継いだ方が亡くなったときに免除されます。対象とした農地のうち、市街化区域の中にある一定の農地に限っては、申告期限から20年が経過したときにも免除される仕組みです。本件の農地はすべて市街化区域の外にあり、終身にわたり営農を続けていただくことが前提になります。 あわせて、3年ごとに継続届出書を提出する必要があること、提出がないと期限の翌日から2か月で猶予が打ち切られ、猶予されていた税額に利子税を加えて納めることになること、農地に国の抵当権が設定されることをご説明したうえで、適用をお決めいただきました。

農地の評価を、農地台帳で確定させた

  • 農地中間管理機構に賃貸借で貸している農地は、自分で使う場合の価額から5%を控除して評価する
    機構との賃貸借は借り手の権利が弱く、いわゆる耕作権としての価値が生じないためです。ただし、機構が農業委員会への届出によって借り受けた農地のうち、賃貸借期間が10年未満のものは例外で、耕作権の目的となっている農地として評価するため、評価額が大きく変わります。 本件は、農地台帳と市の証明書で、田が市の計画にもとづいて機構に賃貸借で貸されており、貸付期間も10年であることを確かめたうえで、5%を控除した価額で評価しました。

所有者の登記がない家屋を、名寄帳と現地の食い違いから見つけた

  • 名寄帳に載っている建物の数と、現地に建っている数が合わなかった
    名寄帳は、市町村が持ち主ごとにまとめた固定資産の一覧で、相続財産の不動産を洗い出す基本の資料です。本件では、お父様名義の名寄帳だけでは、現地の建物の一部が見当たりませんでした。 手がかりになったのは、先代の相続のときの遺産分割協議書です。お父様が取得するとされていた建物があり、先代名義の名寄帳を取り寄せると、そこに載っていました。登記を調べると、建物の所在や床面積を記録する「表題部」の持ち主が先代のままで、所有者を記録する「権利部」の登記はされていません。名寄帳で先代の名義の側に載っていたのは、このためです。現地と登記の記録で確かめ、相続財産に加えています。

名寄帳は、亡くなった方の名義の分を取るだけでは、建物がすべて出てくるとは限りません。現地の建物の数と名寄帳が合わないなど、前の代の名義のまま残っている不動産がありそうなときは、前の代の遺産分割協議書や名寄帳もあわせて確かめることが大切です。

  • 相続の登記をしないままでは、次の世代がさらに困る
    前の代の名義のままでも、相続財産であれば申告に含めます。ただ、相続の登記がされていない不動産は、誰が引き継いだのかが登記からは分からない状態です。代が進んで関係する相続人が増えるほど、かつての話し合いを知らない親族との間で、誰のものかをめぐる争いの火種になりかねません。売ったり担保に入れたりするときも、まず相続の登記を済ませる必要があります。本件では先代の相続までさかのぼって登記を整える必要があり、当事務所をご紹介くださった司法書士に、この建物があることと、相続人の方から登記のご依頼を受けたことをお伝えして、対応していただきました。

配偶者居住権で、配偶者の住まいを守りながら自宅をお子様へ

  • 配偶者居住権とは 亡くなった方の自宅に住んでいた配偶者が、その後も家賃を払わずに住み続けられる権利です。遺言や遺産分割(相続人どうしの話し合いなど)によって取得します。 自宅の所有権はお子様が相続し、配偶者は住む権利だけを相続する、という分け方が可能です。住む権利は所有権より低く評価されるので、配偶者はそのぶん預貯金などを多く受け取ることもできます。
  • 本件での効果
    遺産分割の段階でこの制度を検討したいとのご希望があり、仕組みと評価をご説明したうえで、配偶者が配偶者居住権を、お子様がご自宅とその敷地の所有権を取得しました。 配偶者居住権は配偶者が亡くなると消え、そのときお子様に相続税はかかりません。配偶者が住み続けることと、自宅を次の代へ引き継ぐことを、一度に決めておけるのがこの制度の利点です。 配偶者が取得した敷地を使う権利(敷地利用権)には、小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減額)を適用しています。

使えない特例も、根拠を確かめて記録に残した

  • 1,000㎡を超える敷地があり、地積規模の大きな宅地の評価が使えないか
    面積の要件は満たしますが、市街化調整区域にある宅地は適用の対象から除かれます。例外は、地区計画や条例によって宅地分譲の開発ができる区域だけです。本件の敷地がこれに当たらないことを、市の公表資料で確認しました。 相次相続控除も検討しましたが、10年以内に開始した前の相続で被相続人に相続税が課されていないため、適用はありません。 使えなかった特例も、検討した事実と理由を税理士法第33条の2の書面添付に記載し、申告書とともに提出しています。

対応した結果

  • 小規模宅地等の特例:ご自宅の敷地について約830万円を減額しました。課税価格そのものが下がります。
  • 農地等の納税猶予:相続税のうち約100万円は、いま納めなくてよいことになりました(納税の猶予)。農業を引き継いだお子様が農業を続け、亡くなったときに、この税額は免除されます。途中で農業をやめた場合などは、猶予された税額に利子税を加えて納めることになります。
  • 相続税の総額は200万円台。内訳は、納税猶予 約100万円/配偶者の税額軽減 約50万円/実際の納税額 80万円台です
  • 配偶者の納付税額は0円です(配偶者の税額軽減による)。ほかの相続人の方には納税が生じています。
  • 納税猶予に必要な手続は、すべて当事務所で行いました。ご家族から委任状をいただき、次の手続を代わりに進めています。
    • 農業委員会と市への証明の申請(農業を引き継ぐ方が対象になることの証明、田を公的な機関に貸していることの証明)
    • 農地台帳・公図・評価証明書など、市役所や法務局での書類の取り寄せ
    • 担保提供のための書類の作成
    • 貸している田について、税務署へ出す届出書の作成
    • 3年ごとに必要になる届出について、時期と手順をまとめたご案内 申告期限から逆算して証明の申請を間に合わせ、すべての書類を期限内に提出しました。
  • 申告書には税理士法第33条の2の書面を添付し、確認した事項と判断の過程を記載しています

担当税理士からのコメント

農地の相続には、宅地にはない論点が数多くあります。農地に関しては、今回は納税猶予と、貸している農地の評価が中心でした。ほかにも、農地の区分によって変わる評価の方法、市街化区域の中にある農地や生産緑地の扱い、相続した農地を農業委員会へ届け出る手続、売ったり宅地などに変えたりするときに必要な許可など、ご家庭の事情によって確かめる点が変わります。

農地の納税猶予は、使うと決めた時点で先の長い約束が始まります。市街化区域の外にある農地は、農業を引き継いだ方が亡くなるまで続けることが前提です。3年ごとの届出も必要で、途中で途切れれば、猶予されていた税額に利子税を加えて納めることになります。目先の税額だけで決めるものではありません。当事務所では、猶予される金額と、その後に負っていただく約束の両方をお示ししたうえで、ご家族に判断していただいています。

もう一つ、申し上げておきたいことがあります。相続の登記がされないまま、前の代の名義で残っている不動産です。全国で数多く見つかって問題になっており、2024年4月からは相続登記が義務になりました。今回、名寄帳と現地の数の食い違いから突き止めた建物も、前の代の名義のまま残っていたものです。登記と相続税の申告は別の手続ですが、申告の段階で財産の範囲を確定させておかないと、後の世代に同じ問題が残ります。今回は、当事務所をご紹介くださった司法書士と連携し、登記まで解決していただきました。

農地をお持ちのご家庭では、相続税の申告が農業委員会や法務局の手続と並行して進むため、西尾市内にある当事務所では、申告に必要な範囲で、市の窓口や農業委員会との調整もあわせてお受けしています。相続が起きてからでも、起きる前のご相談でも構いません。お気軽にお声がけください。

よくあるご質問

Q. 短い間に相続が2回続きました。相続税は安くなりますか。

A. 亡くなった方が農業に使っていた農地を、農業を継ぐ相続人が引き継ぐ場合に使える制度です。自分で耕しておられた農地はもちろん、市街化区域の外にある農地を農地中間管理機構に貸している場合も、「特定貸付け」として対象になります。ただし貸しておられた場合は、特定貸付けを行っている旨の届出書を相続税の申告期限までに提出することが条件です。

Q. 農地の納税猶予は、何年か経てば免除になりますか。

A. 年数が経てば免除される、とは限りません。猶予された税額は、農業を引き継いだ方が亡くなったときに免除されます。対象とした農地のうち、市街化区域の中にある一定の農地に限っては、申告期限から20年が経過したときにも免除される仕組みです。3年ごとの継続届出書も必要で、提出がないと猶予は打ち切られます。

Q. 前の代の名義のままになっている不動産も、申告に含めるのですか。

A. 含めます。名義が前の代のままでも、実質的に亡くなった方のものであれば申告の対象です。相続の登記は相続税の申告とは別の手続で、2024年4月からは義務になっています。次の相続で困らないよう、司法書士へご相談ください。


※掲載している事例は、実際にお受けしたご相談をもとにしています。ご家族が特定されないよう、ご家族の構成・年代・経緯などの一部を変更または省略しています。金額は概算です。