基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エリア | 西尾市 |
| ご相談者の属性 | ご長女様(お父様と同居されていたご家族) |
補足:被相続人は80代のお父様。相続人は3名(実のお子様と、養子縁組をされたご家族)。お母様は10年前に他界されており、自宅は同居の2名が取得。
事例の概要
西尾市のお父様の相続で、700㎡超のご自宅の敷地と山林を含む財産(約4,600万円)の申告が必要になったご家族からのご相談事例です。戸籍を遡って法定相続人の数を判定し、基礎控除を4,800万円と確定。小規模宅地等の特例を最大限活かせる遺産分割を設計し、土地は「地積規模の大きな宅地の評価」「不整形地補正」により一筆ずつ評価しました。合計で約3,000万円を圧縮して課税価格を基礎控除の範囲内に収め、相続税の納付は0円(特例適用のため申告は必要)。準確定申告による所得税の還付にも対応しました。
ご相談のきっかけ
お父様を亡くされ、相続登記をご相談されていた司法書士の先生から「相続税がかかるかもしれない」と言われたことがきっかけでした。ご紹介を受け、ご長女様が窓口となってご相談にみえています。
ご家族が抱えていらしたのは、次のようなお悩みです。
- 何から手を付けたらいいのか分からない
- どれくらい相続税がかかるのか
- どのように遺産分割すればよいのか
ご自宅の敷地は700㎡超と広く、他市町には山林もお持ちでした。お母様はすでに他界されており、配偶者の税額軽減が使えない相続です。不安と迷いが同時にある状態からのスタートでした。
「いくらかかるか」と「どう分けるか」は、別々の問題ではありません。財産をどう評価し、誰がどれを取得するかで結論が変わるからです。
ご相談のポイントと対応
この相続では、税額が生じるかどうかが「法定相続人の数」の判定に懸かっていました。戸籍を遡って相続人の数を確定させ、土地は一筆ずつ評価し、特例は使える範囲を正確に見極めて適用しました。
- 養子縁組をされたご家族がいらっしゃいました。 相続税では、養子を相続人の数に何人まで含められるかにルールがあり、単純に数えるだけでは正しい答えになりません。養子であっても実子と同じように扱われる場合もあり、どちらに当たるかは戸籍を遡って親子関係を一件ずつ確認しなければ判断できません。
- 戸籍謄本の一式を拝見し、一件ずつ確認しました。 相続登記のために整えられていた戸籍を、あらためて相続税法の目で読み直した形です。そのうえで法定相続人は3名と判定しました。
- この判定が、結論そのものを決めました。 1名変われば基礎控除は600万円変わります。今回はこの判定で基礎控除が4,800万円となり、課税価格を上回りました。誤れば相続税が発生していたケースです。
- ご家族から「使える特例は最大限使いたい」とのご相談がありました。 小規模宅地等の特例は、誰がどの土地を取得するかで使える金額が変わります。取得のパターンごとに計算をお示しし、ご家族全員が納得できる分割案をまとめました。
- ご自宅の敷地は、複数の土地に分かれていました。 共有にせず土地ごとに分けて取得していただき、限度面積330㎡を使い切る形で「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」を適用。80%の評価減となりました。不動産を取得しない方との差は代償分割で調整し、相続人全員の合意のもとで遺産分割協議書を作成しています。
- 一方で、敷地内の倉庫の約半分は相続人の事業用に使われていました。 事業用に使用貸借されている床面積に対応する地積は、特例の対象から除外して計算しました。特例は「使えるだけ使う」ものではなく、使える範囲を正確に見極めるものです。
- ご自宅の敷地が700㎡超と広かった。 「地積規模の大きな宅地の評価」を適用。国税庁の適用要件チェックシートで面積・地区区分・容積率などの要件を確認し、規模格差補正率により約22%減額しました。
- 敷地がいびつな形状で、二方向で道路に接していた。 公図に想定整形地を作図してかげ地割合を出し「不整形地補正」を、あわせて「奥行価格補正」を適用。角地による側方路線影響加算も正しく反映しています。加算要素も適正に織り込むことで、根拠のある数字になります。
- 前面道路や都市計画上の制限も、現地と役所資料で確認。 セットバックや都市計画道路予定地に該当しないことを確認しました。「該当しないことの確認」も評価の一部です。
- 他市町の山林の一筆が「保安林」だった。 保安林は伐採制限に応じて評価を減額できますが、この土地は固定資産税が非課税で、評価額そのものが付されていませんでした。そこで市区町村から類似地の価格の通知を受けて基準とし、県へ伐採制限の区分を確認して30%減額しました。
- 建物のうち4棟が未登記だった。名寄帳で「先代名義のまま残る土地」がないかも確認。 未登記の建物も相続財産です。登記事項証明書と名寄帳を突き合わせ、すべて評価に反映しました。名義変更がされないまま残る土地は申告漏れの典型ですが、該当はありませんでした。
- 亡くなる直前に、預金からまとまった出金があった。 6日前と2日前の出金を確認し、手元に残っていた現金として計上。タンス預金の計上漏れは、税務調査で指摘されやすい項目です。
- その他の出金についても、使いみちを確認した。 通帳を5年分確認し、聴き取りとあわせて検討。水回りのリフォーム分は減価償却のうえ家庭用財産として計上、車庫の建築に充てられた分は生前贈与として課税価格に加算しました。
- ご家族名義の預金や、相続開始後に入金された年金・保険金も確認。 借名預金がないことを確かめ、入院給付金・年金など受け取る権利がすでに生じていたものは、保険会社の通知書で確認して計上しました。
- 準確定申告により、所得税が還付されました。 亡くなった年の所得について行う「準確定申告」を確認したところ、年金から源泉徴収されていた所得税が還付になることが判明。申告を代理し、還付を受けていただきました。準確定申告にも書面添付を行っています。「納めるための手続き」と思われがちですが、戻ってくる場合もあります。
- 書面添付制度を利用して申告。 税理士法第33条の2に基づく書面(および第30条の書面)を添付し、何を、どの資料で、どう確認して、なぜその判断に至ったのかを明らかにしたうえで提出しました。法定相続人の数の判定や特例の適用範囲についても、根拠資料とあわせて記載しています。
対応した結果
- 戸籍を確認して法定相続人を3名と判定。基礎控除は4,800万円となりました。
- ご自宅の敷地について、地積規模の大きな宅地の評価・不整形地補正・奥行価格補正により、約1,600万円の評価減(路線価による単純評価 約5,920万円 → 約4,320万円)。
- 特例を最大限に活かせる分割を設計し、小規模宅地等の特例により約1,425万円の評価減。
- 山林についても保安林の伐採制限を確認し、該当部分を30%減額。
- これらを積み上げ、課税価格を合計で約3,000万円圧縮。
- その結果、課税価格 約4,416万円 < 基礎控除 4,800万円 となり、相続税の納付は0円。
- ※ ただし申告は必要でした。小規模宅地等の特例は「申告すること」が要件です。特例がなければ課税価格は約7,400万円となり、相続税が発生していたケースです。
- 遺産分割協議も相続人全員の合意でまとまり、申告期限内に申告を完了。
- あわせて準確定申告により所得税の還付を受けていただきました。
担当税理士からのコメント
このご相談は、司法書士の先生から「相続税がかかるかもしれない」と言われたことがきっかけでした。何から手を付ければよいのか、いくらかかるのか、どう分ければよいのか。何も決まっていない状態でしたが、相続のご相談はたいていそこから始まります。分からないまま来ていただいて構いません。
相続税がかかるかどうかは、財産の評価額だけでは決まりません。その手前に「法定相続人が何人か」を確定させる作業があります。基礎控除が相続人の数で決まるからです。今回は養子縁組をされたご家族がいらっしゃいました。養子の数え方には例外があり、戸籍を遡って親子関係を一件ずつ確認しなければ判断できません。ここを1人取り違えれば、基礎控除は600万円変わります。なお戸籍そのものは、相続登記のために司法書士の先生が丁寧に確認されていました。当事務所はそれを引き継ぎ、税の目で読み直しています。
土地の評価と特例の適用では、使えるものは使い切り、使えない部分は正確に切り分けることが要になります。今回は限度面積を使い切る分割をご提案する一方、聞き取りと現地の確認により要件に当てはまらないと判断した部分は、特例の対象から外しました。固定資産税の評価額が付されていない保安林についても、市区町村や県に確認して根拠のある評価額を出しています。評価額にすれば2万円ほどの土地ですが、扱いに困る土地ほど手つかずのまま残るものです。
お伝えしたいのは、相続税が0円でも申告が必要な場合があるということです。小規模宅地等の特例は、申告をして初めて認められます。「税額が0円なら申告しなくてよい」と自己判断されると、特例が使えず、後から納税が生じかねません。相続のお手伝いは、相続税の申告だけで終わりではありません。今回は準確定申告により、所得税の還付を受けていただきました。お母様を先に亡くされているご家庭は、配偶者の税額軽減が使えず、税負担が重くなりがちです。当事務所では、準確定申告やその後の確定申告まで一貫してお引き受けしています。相続のことでお困りの際は、お気軽にご相談ください。


